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成年後見制度

成年後見制度の概要

成年後見制度とは,認知症や知的障がいによって判断能力が不十分な方が,生活をする上で不利益を被らないよう,「成年後見人」がご本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うための制度です。成年後見制度において支援をしてもらう人を「被後見人」支援をする人を「成年後見人」と呼びます。

1)ご高齢に伴い,認知機能が低下してしまい判断能力が十分でなかったりする方は詐欺などの標的にされやすく,悪意を持った人達に狙われ,脅迫や詐欺被害にあい財産を失う事件は後を絶ちません。
成年後見制度とは,認知症・知的障がい・精神障がいなどにより「判断能力が十分ではない方々を守る」ために援助者を選び,法律的に支援する制度であり,社会的にも非常に重要な存在です。この制度によって,後見人は被後見人の財産や金銭面の管理を担当し,不正な取引や詐欺行為に巻き込まれるリスクを最小限に抑える役割を果たしています。

2)下記のような場合,成年後見制度を利用すると解決できる場合があります。

  • 認知症の家族の預金を解約したり,引き出す手続きをしたい 
  • 相続人の中に認知症の方がいるため,遺産分割協議ができない
  • 認知症の家族の不動産や重要な財産を売却して,介護費用や施設費用に充てたい
  • 遠方で一人暮らしの高齢の親族の介護や生活面でのサポートが必要。また詐欺被害にあわないかも心配
  • 障がいのある子供がおり,ご自分も高齢になり,子供の将来が心配 
  • 身寄りがなく一人暮らしをしているが,自分が急な病気になった時,高齢により判断能力が衰えた後の自分の生活や死後のことが心配

老後に備えて成年後見について知っておきたい方,またご家族やご親族の将来が心配な方のために,成年後見制度の種類,成年後見制度の手続きや費用などについて,詳しく解説します。

「任意成年後見制度」と「法定成年後見制度」の違い

 成年後見制度には大きく分けて「任意成年後見制度」「法定成年後見制度」の2つがあります。法定成年後見制度は(民法第7条)を根拠としており,任意成年後見制度は任意後見契約に関する法律(通称,任意後見契約法)を根拠としています。

第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については,家庭裁判所は、本人,配偶者,四親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人,保佐監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求により,後見開始の審判をすることができる。

引用元:e-gov

任意成年後見制度・・・ご本人が成年後見人を指名し契約するというもので,ご本人がお元気なときであれば,任意成年後見制度を選択することができます。
任意成年後見制度は,ご本人の判断能力があるうちに,将来,判断能力が低下したら財産管理を行ってもらう人を選任するものです。ただし契約は当事者双方の合意が必要で,ご本人が望んだとしても,任意後見人になってもらいたい方が拒否すれば契約は成立しません。
任意成年後見制度を利用する場合は,ご自身で信頼できる人を任意後見人とすることが可能ですので,ご本人があらかじめ特定の信頼できる人に頼みたいというご希望があるのであれば,お早目に任意成年後見制度のためのご準備・お手続きを始めることをおすすめします。

法定成年後見制度・・・判断能力が低下してしまい,任意成年後見人をご自分で選ぶことができなくなってしまった場合は,家庭裁判所に法定成年後見人を選任してもらいます。家庭裁判所は,後見開始の審判をするときは,職権で成年後見人を選任します(民法843条1項)。

法定成年後見制度は,さらに「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれます。この3つの類型では,それぞれ対象となる人が異なり,後見人の権限にも違いはありますが,ご本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて,家庭裁判所が選任することになります。

ご本人の親族以外にも,法律・福祉の専門家,福祉関係の公益法人,その他の法人が選ばれる場合もあります。後見開始等の審判の申し立ての際に,成年後見人等に推薦した人を,家庭裁判所が希望どおりの人を成年後見人等に選任するとは限りません。
なお,ご本人の家族が後見人になれるのは全体の約20%(成年後見関係事件の概況・2020年1月〜12月 / 最高裁判所事務総局家庭局からのデータより)です。

ご希望に沿わない人が成年後見人等に選任された場合であっても,特別の理由がない限り成年後見人の解任はしてもらえないことがほとんどです。

>>「家族信託」と「成年後見制度の比較」ページはこちら

任意成年後見制度

1) お勧めする理由と注意点
法定成年後見人は裁判所によって選任されることから,前述したとおり,もしご本人やご家族との感覚が違ったりしても解任はほとんど認められません。その点,あらかじめご本人が,将来の施設関係や財産管理をあの人に任せたいというご希望が大きければ,前もってその方と話し合い,やってほしいこと・方法等を指示し報酬も取り決めておくことで,納得のゆく老後を過ごせる可能性が高まります。
但し,任せた方が実は悪い人であったような場合は最悪の結果となります。このあたりが任意後見制度を使うかどうかの判断のわかれ道になるでしょう。

2) 手続きの流れと必要書類
弁護士や司法書士との打ち合わせにより,任意後見契約の内容が確定すれば,下記の準備書類を用意して,任意後見契約の作成を公証人に依頼することになります。
公証人とは,元裁判官や元検察官など法律の専門家です。契約書を「公正証書」として作成し,作成したことを制度的に保証するのが役割です。

<必要書類>
●ご本人(委任者)
①ご本人確認資料(印鑑登録証明書,運転免許証,マイナンバーカードなど)
②戸籍謄本又は戸籍抄本(3か月以内に発行されたもの)
③住民票(3か月以内に発行されたもの)

公正証書を作成する段階で,ご本人の契約締結について疑問がある場合,公証人への診断書が必要になることもあります。

●任意後見受任者
①任意後見受任者ご本人確認資料(印鑑登録証明書,運転免許証,マイナンバーカードなど)
②住民票(3か月以内に発行されたもの)

法定成年後見制度

1) 法定成年後見人が出来ること・出来ないこと
ご本人の身上保護や財産を守ることが制度の目的であるため,法定成年後見人の業務は一定範囲に限られます。ご本人(成年被後見人)の利益に繋がる行為でも禁じられているものがあるため,法定成年後見人制度を検討中の際は,必ずご確認ください。

法定成年後見人が出来ること法定成年後見人が出来ないこと
預貯金等の管理,解約成年被後見人の身分行為(結婚,離婚,養子縁組,離縁,認知等)
保険金の受け取り成年被後見人の財産を使った投資や運用
相続手続き(ご本人が相続する予定の財産についての遺産分割等)生前贈与
身上保護(施設の入退所や病院の入退院手続き,介護保険手続き等)事実行為(身の回りの世話など)
成年被後見人名義の自宅売却(裁判所の許可が必要)成年被後見人の保証人(身元保証人や身元引受人)
契約の取消し成年被後見人の手術や臓器提供の際の同意

2)法定成年後見制度: 3つのメリット・5つのデメリット
法定成年後見制度の利用は,決して強制されるものではありません。ご家族など,身の回りの人が必要と感じた際に申立てをすることで手続きが開始されますが,一度申立てすると取り下げることができません。そのため,法定成年後見制度のメリット・デメリットについて十分に理解し,制度を利用するかどうか慎重に判断しましょう。
 
 < 3つのメリット >
    * 法定成年後見人は,ご本人の預貯金や不動産を管理できる
    * 法定成年後見人は,ご本人が行った契約を取り消すことができる
    * 法定成年後見人は,ご本人の生活に必要な契約を代理で行える

 < 5つのデメリット >
    * 法定成年後見人または後見監督人として,弁護士・司法書士などの専門家が関与する可能性が高い
    * 法定後見事務・法定成年後見人に対する報酬(費用)が発生する
    * 相続税対策や資産運用等は出来ない
    * 一度、制度の利用を開始すると,ご本人がお亡くなりになるまで止めることができない
    * 法定成年後見人の途中交代は難しく,基本的に最初に決まった人物が継続する

3)法定成年後見制度の手続きの流れと必要書類
認知症や知的障がいなどの精神上の障がいによりご本人の判断能力が低下し,法的に保護する必要がある場合,ご本人の住所地のある家庭裁判所に対して,後見等開始の申立てを行います。
 
    1)家庭裁判所に対して,後見人の選任を申立てる
    2)家庭裁判所によって選ばれた法定成年後見人が,財産目録を作成し整理する
    3)法定成年後見人は財産の管理を行い,毎年報告する義務がある

申立人の資格は法律で決められています。ご本人またはご本人の四親等以内の親族(配偶者,子,孫,両親,兄弟姉妹,従兄弟,甥,姪など)が,申立てを行うのが一般的です。

申立人は必要書類を揃え,家庭裁判所に申立てを行います。家庭裁判所の申立書,必要書類の一覧表などの資料は家庭裁判所のWEBサイトから入手できます。各家庭裁判所により必要書類や書式が異なる場合がありますので,事前に必ず申立てを行う家庭裁判所のWEBサイトをご確認ください。

主な必要書類の請求先
 ① 診断書(書式は家庭裁判所のサイトのもの)⇒ ご本人の主治医に依頼する
 ② 「登記されていないことの証明書」・・・証明事項は「成年後見人,被保佐人,被補助人とする記録がないこと」になります。⇒ 法務局

*参考「登記されていないことの証明書」を法務局に請求する際には,証明申請書だけでなく添付書類も必要になります。そして添付書類はどなたが証明書を請求するかで異なりますので,ご不明な場合は当ページ上部の「お問い合わせ」より,ご連絡をお願いいたします。

 ③ 戸籍・住民票、固定資産評価証明書など ⇒ 市役所・区役所等
 ④ 不動産などの登記事項証明書 ⇒ 法務局
 ⑤ 預貯金・有価証券などの証明書 ⇒ 預け先の金融機関

制度を利用した時にかかる費用

1)任意後見・法定後見どちらにおいても,裁判所への申立時に費用がかかります。内訳は以下の通りです。詳しくは,家庭裁判所のWEBサイトをご確認ください。

費用の種類金額
収入印紙3,400円分 (内訳:申立1件につき800円分+2,600円分)
鑑定費用(ご本人の判断能力について確認する費用)約5万円~
医師の診断書の作成費用数千円程度(医療機関によります)
その他住民票や戸籍謄本の発行代,送付費用など

鑑定費用は,裁判所が鑑定を必要と判断した場合に必要な費用となります(鑑定が実施される割合は,それほど多くはありません)
法定成年後見制度の「後見」「保佐」「補助」の3つの類型うち,ご本人がどこに該当するかを最終的に判断するのは家庭裁判所ですが,その判断基準の資料として医師の診断書の提出が求められます。
医師の診断書でご本人の状態がどの程度なのか明らかな場合には鑑定は不要ですが,診断書だけで判断が出来ない場合には,鑑定が必要となります。

2)公正証書作成にかかる費用(任意後見のみ):任意後見制度を利用する際は,上記のほかに,任意後見契約公正証書の作成のための費用がかかります。

費用の種類金額
公正証書作成手数料11,000円
登記嘱託手数料1,400円
登記所に納付する印紙代2,600円
その他交付する正本等の証書代や送付費用など

3)報酬(専門家に依頼した場合)
法定成年後見人や任意後見監督人への報酬は,裁判所が申立てに基づいて「審判」により決定します。審判によらずに報酬が発生することはありません。

例えば東京家庭裁判所の場合,通常の後見事務を行った場合,法定成年後見人への報酬は月額2万円が目安です。
ただし,管理財産に応じて報酬は変わってきます。管理財産額が1,000万円以上で5,000万円以下の場合は,財産管理事務が複雑で困難になるケースが多いため,月額の報酬額の目安は3万円~4万円となります(ただし,実態はこれらの目安と異なる場合もあります)。一方,任意成年後見人の報酬は,任意後見契約で定められた金額(無償でも可)となります。

まとめ

成年後見制度は2000年にスタートした支援制度で,知的障がいや認知症などにより判断能力が不十分な人に代わって財産管理や福祉サービスの契約などを支援することを目的としています。

成年後見制度は超高齢社会となっている日本において,非常に重要な役割を期待されています。
2025年には,認知症患者が730万人を超えると推計されているため,その方々の支援を行う受け皿が必要になります。

引用元: 三菱UFJ信託銀行

しかし2021年末時点で,成年後見制度の実際利用者数は約24万人です。
同年の認知症患者はおよそ602万人とされているため,成年後見制度利用者は4%にも届かない数にとどまっています。
認知症の方すべてが成年後見制度の利用を必要としているとは限らないためデータだけでは正確に判断出来ない部分もありますが,いづれにしても,成年後見制度が広く利用されているとは言い難い状況といえます。

最高裁判所事務総局家庭局 「成年後見関係事件の概況
(2021年)」に基づき作成

特に法定成年後見制度の普及を妨げる要因として,制度の利用のしづらさや問題点が指摘されています。たとえば,次のような点です。

*法定成年後見人等は一旦選任されると原則として終わりがなく,柔軟に交代してもらえない
*必要であった問題が解決後もずっと就いたままで,途中で止められない
*法定後見事務・法定成年後見人に対する報酬(費用)の負担が続く

など,法定成年後見制度への不満や利用を躊躇(ちゅうちょ)するという問題が蓄積しています。こういった部分が成年後見制度の利用が避けられる大きな要因となっているようです。

政府はそのような状況を改善すべく,成年後見制度の抜本的な改正を検討し始めています。
2021年末,成年後見制度の利用を促進する2022年度からの5カ年計画案を発表しました。
制度を短期間のみ利用することを可能にしたり,途中で後見人を交代したりすることができるようにする改正が検討されています。現状としては使い勝手の面で問題があるといえますが,今後の展開に注目が集まっています。

2019年6月に成年後見制度の一部が改正されました。
この改正のポイントは,成年後見制度を利用した場合の欠格条項が廃止されたことです。

欠格条項とは,資格制限とも呼ばれる成年後見制度の大きな特徴です。
成年後見制度を利用した人は,医師,税理士などの資格や会社役員,公務員などとしての地位を失うこととされています。このような制限は,全部で180以上に及ぶものとされています。しかし,成年被後見人や被保佐人の人権を侵害するものであるなどの指摘がされ,見直しが検討されていたのです。そして,2019年6月に欠格条項を原則として一括削除する法案が成立しました。

 当事務所は,現在のところ成年後見制度の問題点を回避する方法の一つとして,家族信託をご検討されることをおすすめしています。
ご本人の財産管理を第三者に任せる点では,家族信託は成年後見制度と共通しますが,家族信託は,成年後見制度より自由度が高いという利点があります。

>>「家族信託」のページはこちら

特に法定成年後見制度は,ご本人がお亡くなりになるまで後見人に報酬を支払い続けなければなりません。法改正で今後,成年後見制度の利用期間が見直されれば,費用の問題は解消されるかもしれませんが,改正は未だ検討段階です。
一方,家族信託は,設計段階では費用が発生するものの,成年後見制度と異なり継続的に費用が発生しない仕組みにすることができます。長期で考えると,家族信託は成年後見制度よりも費用を抑えられる可能性が高いです。

成年後見制度を取り巻く法律は刻々と変化し,成年後見制度がより身近になってきている制度であることは間違いありません。しかし認知症治療に特化した治療法が,今のところ確立されていないという状況もふまえ,認知症対策等で大切なことは,1つの制度にとらわれることなく,ご本人やご家族の状況を総合的に判断することが大切なのではないでしょうか?

弁護士法人紫方里では,成年後見制度に関する内容や手続き等をご理解頂けるよう,電話・メール・LINE(無料の音声通話やビデオ通話)等でサポートさせて頂きますので,どうぞご利用ください。また,ページ上部の「お問い合わせ」からもご質問等を受け付けております。

 - おわりに -
冒頭でもお伝え致しましたが,先が見えない,迷った時には,照らしてもらおう光の道標(みちしるべ),とても短い言葉ではありますが,どうしようもない状況に立たされたときこそ,深く心に響きます。

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