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遺言

一般的に遺言は「ゆいごん」という読み方をしますが,弁護士や司法書士などの法律の専門家は仕事で遺言を「いごん」で統一しています。

一般の方が弁護士や司法書士にご相談の際には,どちらの読み方でも誤りではありません。どちらか意識してお使いになる場合には使い分けても良いと思いますが,特に混同しても不都合はありません。

亡くなられた方が何らかの意思を遺(のこ)している場合,例えばビデオレターやエンディングノートに綴られた言葉は「遺言(ゆいごん)」ですが,その中で法律で定めた要件を満たし実際に法的な効果をもつものは「遺言(いごん)」として扱われるとイメージされると分かりやすいかもしれません。

時に法律上の言葉は通常の読み方と違うことがあります。「競売(きょうばい)」は「けいばい」,「兄弟(きょうだい)」は「けいてい」と読みます。

ところで,遺書(いしょ)とはご自分の死後に残されるご家族,ご友人,知人など親しい方に向けてご自分の気持ちを伝える手紙のことで,死期が間近に迫った方が残すものです。そのため,残された方にどうしても伝えたいプライベートなことやお別れの言葉を記(しる)した内容が主になるかと思います。

遺言と遺書には明確な違いがあります。

遺言(いごん)は,お元気なうちに準備しておく保険のようなもの
遺書(いしょ)は,亡くなる直前に書くご家族や知人に宛てた手紙のようなもの

例えば「遺言を書きましょう」と言うと,「縁起でもないことを言うな,早く死ねと言いたいのか!?」と怒りだす方がいらっしゃいます。この方は,残念ながら遺言と遺書をはき違えてしまっています。

人生いつ何があるかわかりません。万が一に備えて準備しておくべき遺言(いごん)残されたご家族や友人・知人のために,生涯をかけて築き上げたご自分の財産を感謝の気持ちをもって配分することが遺言の目的です。ですから縁起が悪いという筋合いのものではなく,むしろ遺言は「お世話になった方々への感謝の気持ち・残された家族への安心を贈る」最終的な意思表示であるといえるでしょう。

遺言(いごん)とは,「人の最終意思に死後法的効果を認めて,その実現を保証する制度」です。ご自身に属する権利義務等について死後どう処分すべきか,生前のうちに意思表示する手段を指します。その意思には亡くなった時点で法律上の効果が生じ(民法第985条1項ー遺言は,遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。),基本的には関係者の手で遺言が執行されます。

遺言書についての基礎知識

1)遺言書を作成する理由

遺産分割の大原則に『遺言書があれば,それに従って分け方を決める。遺言書がなければ,相続人全員での話し合いで分け方を決める』というシンプルなルールがあります。

被相続人(亡くなられた方)による指定分割(遺言書)は協議分割に優先します。協議分割とは,民法の定める法定相続人が法定相続分を基本とした合意による相続方法になります。

 

>>協議分割については「相続開始 その時」をご覧ください。

指定分割は協議分割に優先するので,遺言書があれば遺言書で指定されている遺産の分け方に従うのが基本となります。

有効な遺言書がない場合には,相続人全員で話し合って遺産分割の内容を決めます。これが協議分割です。法定分割における遺産分割協議に参加できるのは法定相続人だけであり,法定相続分は遺産分割協議の際の目安になる相続割合です。

法定相続分は,民法によって定められる相続割合です。それぞれの法定相続人の法定相続分は,相続人と亡くなった人との続柄によって決まります。ただし,相続人全員で話し合って合意すれば,必ずしも法定相続分どおりに遺産を分ける必要はありません。別の方法や割合による分割も可能です。なお,遺言書でも法定相続分とは異なる方法や割合による相続分を指定できます。

「法定相続分は何のためにあるの?自由に決められるなら,あまり意味がないじゃない?」

確かに法定相続分は,仲の良いご家族間では参考程度の役割しかありません。しかし,仲の悪いご家族にとっては重要な意味を持ちます。遺産分割協議で分け方が決まらない場合,遺産分割調停や審判という手続きに進み,これでまとまらない場合は遺産分割審判において裁判官が分け方を決めます。その際には法定相続分に従って分け方を決めますので,やはり法定相続分の考え方は大切になります。

「相続争いなんて,お金持ちの世界の話だ」と誤解している方もいらっしゃいますが,財産が少ない=それだけ貴重な財産ということになりますので,ご家族内の相続トラブルを避けるためにも,お元気なうちに有効な遺言のご準備されることをおすすめします。

2)遺言書の種類

遺言書とは,財産を所有する方がご自分の死後に財産をどう分けるのかの意思を記した書面のことです。遺言書では財産の分け方について意思表示をし,ご自身が渡したいと思われている方に財産を譲ることが可能となります。

この遺言書が無い場合,被相続人(亡くなられた方)の遺産の分け方について相続人全員で話し合って決めることになります(協議分割)。
この話し合いでは,全員の合意がないと遺産分割は成立しません。相続人のあいだで「不公平だ」などというトラブルやご家族やご親族間の関係がこじれてしまうこともありますので,事前に遺言書を作成しておくことはご自身のためにも,のこされるご家族のためにも大切なことになります。

「遺言書を作成する」といわれるように,遺言は書面で行うものです。この時,法律で定められる方式に従わなくてはなりません(民法第960条ー遺言は,この法律に定める方式に従わなければ,することができない。)。

方式は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のいずれかから選ぶことができます。

① 自筆証書遺言(じっひつしょうしょゆいごん)

自筆証書遺言とは,被相続人が手書きで作成した遺言書です。ただし,財産目録については,民法改正により2019年1月13日からは,パソコンで作成したものでも認められるようになりました。さらに預金通帳の口座情報がわかる部分のコピーや登記簿謄本のコピーなども目録として添付することもできます。

自筆証書遺言は,署名・押印はご本人のものだけで作成できます。しかし,ご家族に自筆証書遺言の存在を知らせていなければ見つけてもらえない場合や,紛失・改ざんなどのリスクがあります。また自筆証書遺言としての法定の形式が整っていない場合は無効となりますので,ご注意ください。
また2020年7月10日から,自筆証書遺言を法務局で保管する制度が始まりました。この制度を利用しますと,遺言書の紛失・改ざんを防ぐことができます。

② 公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)

「公正証書遺言」とは名前のとおり,公正証書による遺言で,公証人が作成します。
公証人とは,裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった方の中から法務大臣により任命され,公文書である公正証書を作成する専門家です。

裁判所に対する遺産相続争いの申立件数が年々増加していることに応じで,遺言書の作成件数も増加の傾向にあります。下のグラフは,日本公証人連合会が公表した平成25年から令和4年までの公正証書遺言の作成件数に基づき作成したものです。
なお,作成件数が令和2年になって急に下がっている原因として,コロナ禍による自粛要請により,ご高齢者が外出を差し控えたものとも考えられます。

グラフ

日本公証人連合会HP「遺言公正証書の作成件数について」)に基づき作成 https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/yuigon2022.html


公正証書遺言のメリットとデメリットを整理すると,次のようになります。

< 公正証書遺言のメリット >

1.公証人の面前で,有効な遺言書を作ることができる。
2.紛失や改ざんの心配がない(公証人役場で長期間保管されます)。
3.相続開始後,家庭裁判所で検認手続き*の必要がない。
4.公証人・証人の立会いの元で厳格に作成されるため,遺言者の意思が明確になり,争いになる可能性が低い。
5.公正証書遺言は公証人が作成するため,ご自分で文字を書くことができなくても,内容を公証人に口頭で伝えれば作成できる。

検認手続きとは,家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認する手続きです。この検認手続きは,家庭裁判所に申し立て,実際に手続きが行われるまで通常1~2か月の期間が必要になります。
自筆証書遺言は,相続が発生し遺言書を開封する前に「検認手続き」を行わなければなりません。

※ただし,令和2年より開始した「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで,検認手続は省略することが可能になっています。

一方,公正証書遺言は,既に公証人による内容確認のチェックが入っているため検認手続きは必要ありません。そのため相続人は相続開始後,速やかに遺言書の内容を確認することができます。

< 公正証書遺言のデメリット >

1.費用がかかる
2.証人を立てる必要がある

公正証書遺言を作成する際には,遺言者の意思どおりの書面であることなどを証明する証人が2人以上必要になります。
原本は公証役場に保管し,正本はご本人,そのご親族,作成代理人弁護士等が保管します。
また公正証書遺言を作成する場合には,財産額等に応じて費用がかかります。

③ 秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)

現在はあまり活用されていませんが,自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴が合わさったような秘密証書遺言というものもあります。

秘密証書遺言とは,遺言の内容を誰にも知られないように作成する遺言書です。遺言書をご自分で作成し,内容を秘密にすることができますが,公証役場で公証人と証人2人以上に秘密証書遺言だという確認をしてもらわなければなりません。秘密証書遺言を作成する場合には,公証役場の手数料がかかります。遺言を検討する方に重要なのは,遺言書の内容と上記の方式選択です。

自筆証書遺言に利点はありますが(例えば手軽に簡単に作れる,費用がかからないなど),安全性かつ確実性の面では断然「公正証書遺言」が望ましいことから,当事務所では「公正証書遺言」の作成をおすすめしています。
また,高額で重要性の高い財産を守り,次世代への承継をご希望であれば,遺言より広い機能を持つ「家族信託」もご検討されてはいかがでしょうか?

>>家族信託に関しましては、こちらのページをご覧ください。

3)遺言で出来ること

遺言は,15歳以上かつ「遺言能力」がある人が行ったものしか効力は生じません
(民法第961条 15歳に達した者は,遺言をすることができる。・第963条 遺言者は,遺言をする時においてその能力を有しなければならない。)。
遺言能力とは,行為の内容を理解しその結果がどうなるか,ご自分で判断できる力をさしています。つまり有効な遺言は,認知症その他の障がいの影響がない状態でないと作成できません。
なお,遺言書に記載すれば全てが実現できるとは限りません。遺言で意思を示すことで実現する,つまり遺言書に記載して法律上の効果が生じる内容は「法定遺言事項」と呼ばれています。

法定遺言事項は3つのジャンルに分けることができます。

*財産相続に関すること
*身分に関すること
*相続以外に関すること
それぞれ,民法や民法以外の法律で決められています。

法定遺言事項は,主に以下の14事項あります。

< 財産相続に関すること >
相続分の指定又は指定の委託 (民法902条1項)
包括遺贈及び特定遺贈 (民法964条,ただし遺言執行者がいない場合民法1012条2項)
遺産分割方法の指定若しくは第三者への委託 (民法第908条)
遺産分割の禁止  (民法第908条)
遺産分割における担保責任に関する定め (民法914条)
遺言執行者の指定又は指定の委託 (民法1006条1項)
祭祀承継者の指定 (民法第897条第1項)
特別受益の持ち戻し免除 (民法第903条第3項)
推定相続人の廃除・廃除の取消し (民法第893条,第894条2項)
一般財団法人の設立 (一般法人法152条2項)
信託の設定 (信託法3条2項)

< 身分に関すること >
認知  (民法781条2項)
未成年者の後見人指定及び未成年後見監督人の指定 (民法839条,民法第848条)

< 相続以外に関すること >
保険金受取人の変更 (保険法44条1項)

これら以外の事項について遺言書に記載しても法的には効力がありませんので,注意が必要です。

ただし,法定遺言事項以外に「相続人への感謝などを記載する」「遺言の趣旨を補足する」「遺留分を行使しないよう希望する」「遺言者自身の葬儀方法の希望を記載する」など記載することは可能です。これを「付言事項(ふげんじこう)」といいます。
付言事項をうまく活用すれば,法定遺言事項ではカバーできない人間関係などについても配慮することが可能となり,遺言者の想いがより彩りのあるものとなることでしょう。

4)遺言で出来ないこと:「遺留分」(いりゅうぶん)について

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合のことです。

遺留分が特に重要になるのは「愛人にすべての財産を遺贈する」「長男にすべての遺産を相続させる」「姉は生前に親から土地を贈与されていた」など、特定の人に全部あるいは多くの遺産が遺贈されたり, 相続分として指定された不公平な遺言書がのこされていたケースです。

相続には、被相続人(お亡くなりになった方)のご遺族の生活を守る側面もあり、被相続人がご自身のお子様や配偶者以外の第三者にすべての財産を遺言によって遺贈する場合、状況によってはご遺族が経済的に困窮するおそれがあります。このような問題が発生しないよう、法律により最低限の遺産がご遺族に渡るよう保障された制度が遺留分なのです。

兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺言によって遺留分を侵害された場合、侵害者へ「遺留分侵害額請求」を行い、侵害された遺留分を取り戻すことが出来ます。基本的に、法定相続分の2分の1(相続人が父母や祖父母等直系尊属のみの場合は3分の1)が遺留分として認められます。

民法第1046条 【遺留分侵害額の請求】
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

引用元:e-gov

遺留分を侵害するような内容の遺言も有効ですが、せっかく遺産の争いが起こらないように遺言を残しているのですから、後から遺留分をめぐる争いが起きないよう、遺留分には気をつけて遺言を作成する必要があります。遺留分に対する配慮として考えられるのは、たとえば、遺留分に相当する財産を遺留分権利者にも相続させておく、付言事項として「遺留分を侵害する相続割合としている理由」を説明しておく、などの対応が考えられます。このようにすることで、後日の遺留分をめぐる争いを避けることができるかもしれません。

≫遺留分に関しましては, こちらのページをご覧ください。

公正証書遺言の作成をする上で,公証人との打ち合わせや必要書類の収集などに大変手間がかかります。スムーズに遺言書を作成するためには,弁護士や司法書士等の専門家に依頼することをお勧めします。

1)ご相談・ヒアリング

弁護士がご相談者の家族構成,ご希望などをお伺いします。そして遺言書の内容や書き方,手続きの流れ,費用などもご説明いたします。

遺言書の原案は公証人役場が考えてくれるものではありませんので,原案作成のため,初回ご相談の際にはメモ書きで構いませんので,下記の内容を箇条書きでまとめたものをご持参頂けますと,公正証書遺言の完成までがスムーズに行えます。

※ 遺言書に記載する相続財産の一覧表(メモ)
預貯金:口座の特定ができるように,金融機関名・支店名・口座番号・預金の種類・概算預金額なども記載してください。
不動産:登記簿謄本(登記事項証明書)を確認して,所在・地番(土地の場合),家屋番号(建物の場合)まで把握します。漏れのないようしっかりと調べましょう。
株式その他(証券会社からの報告書,生命保険証書など)

※ 誰に何を相続させるか

誰に何を相続させるかは,基本的に遺言書を作成される方が自由に決められます。ただ,相続には「遺留分」というものがあります。遺留分とは,法律によって定められた相続人が必ず相続できる価値のことです。遺留分を考慮せずに相続指定をしてしまいますと,せっかく作成した公正証書遺言が遺言者の思いどおりにできない可能性もありますので,弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。

また,法定相続人以外に財産を相続させたい方(お世話になった方など)がいらっしゃる場合には,その方の情報もお知らせください(メモ書きで構いません)

なにをどこから手をつけたら良いのか分からない段階から,相談料などの費用が掛かってしまうと安心して相談する事もできません。当事務所では,初回のご相談は無料となっております。

2)必要書類の準備

原案の作成と並行して必要書類の準備も進めましょう。公正証書遺言を作成するにあたり提出を求められる書類は,おおよそ以下のとおりです。

遺言者本人の戸籍謄本
遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
受遺者(財産をもらう人)の住民票
固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
不動産の登記簿謄本
証人予定者の確認資料
遺言執行者の特定資料

なお,公証人役場によって必要書類が若干異なるため,追加の資料が求められることもあります。

3)公証人役場への原案と必要書類の提出

遺言書の原案と必要書類の準備が出来ましたら,公証人役場へ提出します。不備なく準備することができたこの段階で,ようやく作成日の予約が取れるようになります。

4)公証人との事前打ち合わせ

公正証書遺言の原案と必要書類を公証人役場へ提出し,公証人と打ち合わせを行います。
法的に間違いのないものに仕上げるのはもちろん,弁護士が公証人としっかりと打ち合わせをさせていただくことで遺言者様のご負担が軽くなります。公証人役場との連絡は全て当事務所で行いますので,ご安心ください。
なお,遺言内容や準備する書類等にもよりますが,公証人と打ち合わせには通常,2週間~1か月程度かかります。

5)証書作成日時の調整・証人の選定

公証人役場と遺言書案の調整を重ねながら日程を決めて証人2人と公証人役場へ向かい,公証人立会いのもとで作成手続きが進められていきます。公証人手数料は,証書作成当日,現金で持参します。クレジットカード決済を受け付けている公証人役場もあります。
公正証書遺言作成で公証人役場に支払う手数料は,遺言に記載する財産の価額により異なりますが,通常の財産額であれば,約3〜10万円(出張なしの場合)が一般的です。

遺言者本人が公証人役場へ行くことができない場合は公証人に出張してもらうことができます。ただし出張に消極的な公証人役場もありますので,事前にご相談ください。
※公証人が病院などに出張する場合は手数料が1.5倍に,またその場合,公証人の日当2万円(4時間まで1万円),別途交通費もかかる,ということが多いです。

公正証書遺言作成時には,公証人による口述に立ち会うことができる証人2名が同席することが必要です。ただし,相続の関係者やご親族ですと証人欠格に該当する場合がありますので,通常は,全く関係のない第三者の証人を探すほうが安全です(民法第974条参照)。
なお弁護士法人紫方里にご依頼をいただいた場合,弁護士と事務員を証人に立てることも可能です。

6)証人2人の立会いの下,公証人役場で証書を作成

遺言書の作成当日,遺言者及び証人が持参する書類等は以下のとおりです。

※ 遺言者ご本人
① 印鑑登録証明書1通(発行されてから3か月以内のもの)
② 実印
③ 免許証,マイナンバーカード,健康保険証などの本人確認書類
④ 公証人に支払う手数料

①の印鑑登録証明書は,事前に公証人役場に提出することがほとんどです。作成当日は②と③をご持参ください。なお②の「実印」とは,印鑑登録証明書に登録されている印鑑です。

※ 証人
① 運転免許証,マイナンバーカード,健康保険証などの本人確認書類
② 実印または認印(実印でも認印どちらでも可能です)

7)公正証書遺言が完成

公正証書遺言の作成当日は,おおよそ次の流れで進められます。
1.公証人からの挨拶
2.遺言者と証人2名に対し,公証人から本人確認,遺言内容等についての話がある。
3.公証人が記載した内容を遺言者及び証人に読み聞かせる。
4.遺言者及び証人が,記載の正確なことを承認し,各自これに署名・押印する。
5.公証人が,民法969条の方式に従い真正に作成された旨を付記し署名・押印。

公正証書遺言は,原本・正本・謄本の3部が作成されます。公証役場で保管されるのは,このうちの原本。正本と謄本は,遺言者に交付されます。

原本:遺言者(遺言書を作成した人),公証人,証人の署名と押印がされたもの
正本:原本の内容を記載したもので,相続登記,預金引出し等の各種手続きで使用できる
謄本:原本の内容を記載したもので,効力はないが遺言の内容が確認できる

公正証書遺言原本は,公証人役場で厳重に保管され,遺言書の紛失や偽造といったトラブルを防げるようになっています。
※ 公正証書遺言の原本は,原則として20年間公証人役場で保管されます。ただし実質的には,遺言者がお亡くなりになるまでは保管されると考えて良いでしょう。

遺言書作成が必要なのは,どんな時?

遺言は相続手続きに必須というわけではありません。遺言書がなくても,被相続人がお亡くなりにった後,遺産分割協議を行い,各々,納得できる形で財産が引き継がれるのであれば問題ありません。それでも遺言書の作成をするのは,生前のうち,「誰が」「どの財産を」「どのように」取得すべきか,明確にしておきたい事情があるからです。
下記に説明する状況に心当たりがある方は,遺言書の作成をご検討されてはいかがでしょうか?

※ 自宅不動産がある場合
※ 賃貸アパート等の投資用資産がある場合
※ 事業承継が必要な場合
※ 法定相続人以外に遺産を譲りたい方がいる場合
※ 家庭事情が複雑な場合

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)について

1)遺言執行者とは

遺言執行者とは,名前のとおり「遺言を執行する人」,つまり遺言を作成した方の意志を受け継ぎ,遺言の内容を確実に実現するために各種手続きを行う役割の方です。

民法第1012条【遺言執行者の権利義務】
① 遺言執行者は,遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
② 遺言執行者がある場合には,遺贈の履行は,遺言執行者のみが行うことができる。
③ 第644条,第645条から第647条まで及び第650条の規定は,遺言執行者について準用する。

引用元:e-gov

遺言執行者は絶対に必要なものではありませんが,亡くなった後のことはご自分でどうすることもできませんので「ちゃんと遺言どおりに相続してくれるかな?」「遺言をきっかけに,家族内でトラブルにならないだろうか・・・」と不安に思われている場合には遺言執行者を選任しておくことをお勧めします。

民法第1006条第1項
遺言者は,遺言で,1人又は数人の遺言執行者を指定し,又はその指定を第三者に委託することができる。

引用元:e-gov

上記民法第1006条に記されているように,遺言書の中で遺言執行者を指定することは可能です。また遺言の中で特定の人を指名せず「◯◯さんに遺言執行者を選んでもらってください」と遺言執行者を選任する人を指定することもできます。
遺言書の中で遺言執行者や選任者が指定されている場合,相続人が選ぶ必要はありませんが,これらの指定がない場合は相続手続きを行う際に選出する必要があります。

なお民法改正により,2019年7月1日より遺言執行者が行える範囲が明確に条文上規定され,遺言執行者の権限が拡大されました。

2)遺言執行者の主な権限(遺言執行者が単独で実行できる手続き)

遺言執行者には,遺言内容を確実に実現するために必要な権限が与えられているため,遺言執行者単独で相続手続きを行うことができます。なお,遺言執行者に与えられた権限はあくまでも遺言の内容に限定されます。遺言書に記載された以外の相続財産が発見された場合は,相続人による遺産分割協議でその行方を決めることになります。


遺言執行者が単独で実行できる手続き

相続人調査・相続財産調査
財産目録の作成
貸金庫の解錠,解約,取り出し
預貯金払い戻し,分配
株式の名義変更
自動車の名義変更
不動産の登記申請手続き
寄付
保険金の受取人変更

3)遺言執行者のみが対応できる手続き

相続が発生した際,上記の手続き等のために遺言執行者を必ずしも選任しなければならないわけではありませんが,遺言書に「遺言認知」や推定相続人(遺産を相続する権利を有する人)の相続権をはく奪する「廃除」あるいは「廃除の取消し」の意思表示がある場合には,手続きを行う遺言執行者の選任が必要になります。

 子どもの認知(認知届の提出)
※ 遺言執行者は就任の日から10日以内に,市区町村に認知届の提出をしなければなりません。(戸籍法64条)

② 推定相続人の廃除とその取り消し

遺言執行を行うには,法的な知識が必要となってきます。遺言執行者の選任についてご検討されているのであれば,弁護士や司法書士など法律の専門家にご依頼されることをお勧めします。なお,遺言執行業務は弁護士法人紫方里で受け付けておりますので,詳細はお問い合わせください。

遺言書がなかった場合は,どうなるのか?

1) 相続人全員による遺産分割協議書が作成できないと,銀行口座の預貯金の引き出しは原則としてできません。
*2019年7月に施行された民法改正によって,遺産分割前に相続人が預貯金の一部を払戻しできる制度(預貯金の仮払制度)が制定されました(民法909条の2)。 

各相続人は、相続預金のうち、口座ごと(定期預金の場合は明細ごと)に以下の計算式で求められる額については、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)からの払戻しは150万円が上限になります。
たとえば,相続人が長男、次男の2名で、相続開始時の預金が,1口座の普通預金600万円のみであった場合は,長男が単独で払戻しができる額は,600万円×1/3×1/2=100万円,あるいは 150万円の少ない方で,100万円。1口座の普通預金1200万円のみであった場合は,長男が単独で払戻しができる額は,1200万円×1/3×1/2=200万円,あるいは 150万円の少ない方で,150万円。

次男も申請した場合は,二人の合計で上記の倍額を引き出せます。

2)遺産の分配をめぐり,争いがおこりやすい。

3)未成年者,行方不明者,海外在住の相続人がいる場合,遺産分割協議に協力的でない相続人がいる場合などは,相続手続きがなかなか進まない。

「遺産がたくさんある」「遺産なんて,ほとんど無い」という,持っている持ってないの理由は全く意味をもたず,相続手続きをスムーズに行うためにも遺言書(公正証書遺言を推奨)は必要です。

遺言書の失敗例

自筆証書遺言はトラブルが多く,自筆証書遺言を作成するためには様々な法律知識が必要なため,形式不備で無効になる可能性が高い遺言書の方式です。
せっかく遺言書を作成したにもかかわらず,希望が叶えられなかった例は少なくありません。自筆証書遺言の失敗例には,下記のようなものがあります。

形式不備により無効になる遺言書
自筆証書遺言は,以下の形式を満たしていないと無効です。

・財産目録を除き全文自署で記載
・作成年月日を自署で記載
・氏名を自署で記載
・押印(認印でも可)

これらの形式基準を満たさないものは,遺言書としての効力を持たないものとなってしまいます。形式基準は厳しく,例えば作成年月日を「○○年○月吉日」と記載した遺言書が無効となった例などもあります。

不明確な表現の内容が書かれた遺言書
例えば「自宅を次男に相続させる」と記載した場合,「自宅」とだけ限定されていて,不動産の所在を明記しなければ場所を特定できず,登記申請の際,きわめて困ります。

公正証書遺言のデメリットを一つあげるとすれば,費用がそれなりにかかるという点です。しかし,公正証書遺言のメリットは,先述のとおり①法的に間違いのない遺言を作成できる ②公証人・証人の立会いの元で厳格に作成されるため信憑性が高く争いになる可能性が低い ③紛失や改ざんの心配がないなど自筆証書遺言より,はるかに大きいといえます。

ご自分の死後,財産の分け方の希望を伝える遺言書,のこされた方々が気持ちよく財産を引き継ぐためにも,現在,自筆での遺言をお考えの場合,公正証書遺言の利点を考慮した上で,もう一度ご検討されることをお勧めします。

公正証書遺言作成にかかる費用

弁護士法人紫方里にご依頼いただくことで,専門家がお客様の公正証書遺言作成についてアドバイスを行い,起案から作成までの一連の流れをサポートさせていただきます。
公証人役場では証人2名の立会いが必要となりますが,当事務所の弁護士,職員が証人として立ち会うことも可能です。また公証人との打ち合わせ・調整等も当事務所で行いますので,お客様にお手間はかかりません。

まとめ

確実な遺言書にするためには,遺言書としての形式要件をしっかり守る必要があります。遺言書の作成は初めてという方がほとんどです。のこされた方々が困らないように準備しておいた遺言書が,形式不備などで無効となることは絶対に避けたいところです。

遺言書は非常に大切なものです。
弁護士法人紫方里では,遺言書をお作りになる際には,偽造・変造・紛失のリスクがなく,家庭裁判所の検認が不要となり,相続人が公証人役場で「検索サービス」(公正証書遺言が公証人役場に保管されているかどうかを検索できるサービス)を利用できるなど,メリットの多い「公正証書遺言」を作成されることをお勧めしています。
法律的に有効で,ご自身の意思に沿った確実な遺言書の作成を望まれる場合には,弁護士法人紫方里までお問い合わせください。

当事務所では電話・メール・LINE(無料の音声通話やビデオ通話)等で,遺言書作成のサポートをさせていただきます。また,ページ上部の「お問い合わせ」からもご質問等を受付けておりますので,どうぞご利用ください。
なお,初回のご相談費用は無料となっております。初回のご相談のみで,ご依頼なされない場合,費用は一切かかりません。

弁護士法人紫方里は,コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが,コンテンツに関していかなる保証をするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも,かかる損害については一切の責任を負いません。ご利用にあたっては,利用者ご自身の責任において行って頂きますよう,お願い申し上げます。